主婦だって恋をする
遺影の笑顔

『おかけになった電話は電波の届かないところに……』



何回かけ直しても、その感情のないアナウンスの繰り返し。


成美、そんなに山奥に居るのかな……


諦めて携帯を閉じた俺は膝を抱えて丸くなり、気がつくと眠ってしまっていた。



目を覚ますと太陽は高く昇っていて、閉じた携帯のランプが点滅していた。


成美………?


携帯を開くと知らない番号からの着信が一件あって、伝言も録音されていた。



『涌井香織の母です……』



悲しみが滲んだその声が伝えたのは、今夜執り行われるという
涌井さんの通夜の連絡だった。


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