主婦だって恋をする
電車とタクシーを乗り継いで到着した頃には、既に坊さんがお経を読んでいた。
受付で名前を書いて焼香の列に並んだ俺は、奥の方に見えた涌井さんの遺影を見つめた。
あのとき一緒に居てあげなくて……
涌井さんの強がりに気づけなくて……
励ましの言葉もかけなくて……
本当に、ごめん。
列が進むにつれて遺影の彼女の笑顔がはっきりと見えてきて、目頭が熱くなった。
なんで、死んじゃうんだよ……
もっともっと、色々話したいことがあったのに。
涌井さんなら新しい恋人だって、きっと見つけられたのに。
遺族席の両親に目を向けると、感情が抜け落ちてしまったようなからっぽの表情でただ、参列者に頭を下げていた。
……涌井さんは、もう居ない。
俺は誰に赦しを乞えばいいんだろう……?