主婦だって恋をする
「……それは、間違ったことじゃないと思うわ」
「でも、その夜なんだ。涌井さんが自分の人生に見切りつけたの……」
私を抱きしめる力が強くなった。慶の無念な気持ちが、伝わる。
「俺のせいだ……俺の」
「……慶は悪くない」
私はその言葉を呪文のように繰り返して、彼の背中を撫で続けた。
やがて震える肩は鎮まり、慶のやりきれない悲しみは少しだけ、涙と一緒に蒸発してくれたみたいだった。
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