主婦だって恋をする

「君に、成美が守れるのか……?」



彼の瞳は、“守れない”と言いたげだった。俺はそれに苛立ちを覚える。



「守るに決まってるじゃないですか」



こんな質問、くだらない。

遠回しに俺に諦めろとでも言ってるつもりか?



「それなら、いい。ただ……」



『それなら、いい』もおかしいし、『ただ……』の先も気になる。


俺はこの人の話し方にすっかり疲れていた。



「成美を傷つけたら、許さない」



そんな当たり前の台詞を言って、成美の旦那は俺の前から消えた。


一方的に言いたいことを言われてしまった気がして、悔しさが胸の内でくすぶる。


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