主婦だって恋をする
「足……?」
彼女の下半身側にまわった俺は、綺麗な白いふくらはぎが痛々しくえぐられたさまと、その下に広がる赤い水たまりを目にして、息をのんだ。
この事態が緊急を要することに気づいた俺は、携帯を取り出して迷わず119を押した。
今の状況と場所、成美の傷の様子を伝えると、すぐに救急車を向かわせると言ってくれた。
「成美……すぐ、救急車来るから」
呼吸が荒くなってきた成美の手を、俺は祈るような気持ちで握った。
「……慶、お願いが、あるの…」
「なに?どこか別の場所も痛む?」
「…私の、鞄の中…携帯……」
俺は少し離れた場所で、雨に打たれる成美の鞄を手に取り中から携帯を出した。