主婦だって恋をする
「……あなた」
俺は電話を持ったまま成美の耳に当て、話せるようにした。
「う、ん……足が……」
「わかった……」
「それと……保険、証……お願い……」
そこまで言うと、成美は弱々しい瞳でもういいわ、と俺に伝えた。
パチンと携帯を閉じて鞄に戻そうとする俺に、成美が言った。
「搬送される病院が、わかったら……もう一度、彼に……伝えて、ほしいから……」
「…わかった。携帯は俺が持ってる。成美……もう、喋らない方がいい」
コクンと頷いて目を閉じた成美は、そのまま、意識を失った。