主婦だって恋をする
「初めて会ったときのこと……覚えてる?」
布団で顔を隠す成美さんに問いかける。
彼女は少しだけ顔を出して、コクンと頷いた。
「真っ赤になってゴムの売場俺に聞いてきたよね……からかったらムキになって、クレームの電話まで入れてきたっけ」
「そう……だったわね」
「そんな成美さんが可愛くて……すぐに惹かれた」
結婚指輪をはめているのなんて問題じゃなかった。純粋に、この人と恋がしたいと思った。
だけど……
「俺、ひとつ大人になった」
成美さんと過ごした時間……その間にいろいろなことがあった。そのすべてが、愛しい宝物。
「気持ちだけじゃどうにもならないこと、あるって知った」
その宝物を今、心の奥深くにしまいこもうとしてる。
だからその前にもう少し眺めさせて。
成美さんからもらったものは、どれも宝石みたいに輝いているから。