主婦だって恋をする
「……ごめんね」
顔を上げて、成美さんは言った。目の端に浮かぶ涙は、俺にはもう拭えない。
「なんで謝るの。俺、後悔してないよ、成美さんに恋したこと」
それに、終わりの言葉が“ごめん”なんて、悲しい。
だから俺は立ち上がって、彼女に手を差し出した。
「……ありがとう」
成美さんはゆっくり俺の手を握り、微笑んだ。
この手を離したら、終わり。
そう思うとなかなか手を解けなかった。
……でも、それじゃいけない。
俺は切ない気持ちを振り切って細い指先を離した。