主婦だって恋をする
病院から家に帰るまでは、案外落ち着いていた。
しばらく、恋愛はいいや……
そんなことを思いながらアパートの階段を昇った。
ポケットから鍵を取り出して玄関を開ける。
……誰も、居ない。
一人暮らしなんだからあたりまえだ。
靴を脱いで上着を放り投げ、リビングの床にどかりと腰を下ろした。
「………………っ」
二人で居ることに慣れすぎていた。
いつの間にか彼女はこの部屋の一部で……
それが抜け落ちた空間は、いいようのない寂しさに満ちていた。
彼女の香りだけがかすかに残っていて、俺を慰めるようにまとわりつくから……こみ上げてくる涙を我慢することができなかった。
俺はこんなにどうしようもなく……
成美さんを愛していたんだ。