主婦だって恋をする

「……なに?この袋」



こたつの陰から美香が見つけたのは、あの人の忘れ物だった。



「……靴?これ女物じゃん。
あ、もしかしてさっき言ってた人の?」



壊れてるじゃん、とかこの靴おばさんくさー、とか美香が好き勝手言っている。



だけど俺は、もしかしたら彼女がこの靴を取りにまたここへ
来るかもしれない……

そんな期待が膨らんで、美香の話なんて耳に入らなかった。



「ねえ!!」



上の空だった俺の目の前に来た美香が、ずいっと顔を寄せる。



「何だよ……」


「その人、年上なの?」


「……たぶん」


「たぶんって、何よ?」


「年、聞いてないから」



……知ってるのは名前だけ。

俺がそう言うと、美香はいきなり怒り出した。



「やっぱり変な女に騙されてるんじゃないの!?
名前しか知らない人をどうして家に上げるのよ!」



……美香の言い分も、後半はもっともだと思った。


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