主婦だって恋をする
「……嘘、ついたのね?」
瞳を伏せて、俺に背を向けようとした彼女の腕を掴んだ。
「……成美」
以前のように名前を呼ぶと、彼女は微かに身体を震わせた。
「俺のこと見て」
ゆっくりと顔を上げた成美は、睨むような視線を俺に向けた。
「私たち……別れたのよ?」
「わかってる」
「わかってるなら、こんなこと……」
「最後に、するから……」
そう、これで最後。
今日が終わればちゃんと忘れるから。
だから、お願い……
俺に、時間をちょうだい?
「慶、ちょっと……や」
俺は嫌がる彼女の手を無理矢理引いて、待たせていたタクシーに乗り込んだ。