主婦だって恋をする

病院に戻った私は、始めにナースステーションに寄って、黙って居なくなったことを謝った。

理由は、もちろん濁して……


看護師さんたちはあまり怒っていなかった。

夫に連絡したとき、行き先に心当たりがあると言ったそうだ。

そして、すぐ戻って来る、とも。



「さっきご主人様がいらして、お部屋の方で待ってますよ」



そう言われて、私は自分の病室へ向かった。



部屋の前まで来てゆっくり扉を開けると、ぼうっと窓の外を眺める夫の後ろ姿が見えた。



「……ただいま」



静かに、その背中に声をかけた私。

振り向いた彼は、穏やかな表情でこちらを見る。



「……私がどこに行ってたか、解ってるみたいね?」


「……なんとなく、ね。でも信じてたよ、戻ってくること」


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