主婦だって恋をする

「これ、下さい」



レジにいたのは、私がかつて愛した男の子。



「テープでいい?」



そう言って顔を上げた瞳は、もう私を意味ありげに見つめたりしない。



「こういうのはちゃんと紙袋に入れるのよ」


「……そうだった。変な主婦からクレームの電話きちゃうもんな」



私はクスッと笑って、彼が手際よく袋詰めした商品を受け取った。

こんな冗談を冗談として受け止められる自分にほっとした。

私の中で、彼はちゃんと過去の人になったみたいだ。



「……俺、今日でバイト最後なんだ。そろそろ就活とかしないといけなくて」


「……そう」



じゃあ、きっともう二度と会うこともないんだ……


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