主婦だって恋をする
夫に抱かれて
忘れよう……忘れるのよ今日のことは。
頭の中で呪文のようにそればかり唱えて歩いていると、いつのまにか自分の家の前だった。
急いで夕飯を作って、彼が帰ってきたらいつも通りの顔でおかえりなさい、って言えばきっと大丈夫――……
鞄の中から鍵を探り当てて顔を上げると、玄関の電気が点いていた。
「嘘……」
それは夫が先に帰っている証拠だった。
恐る恐るドアを開けると、ほくほくといい香りが家中に漂っていた。
不思議に思っているとリビングのドアが開き、夫が出てきた。
「おかえり。どこか行ってたの?」
「うん……ちょっと買い物に……
今日は、随分早いのね。まだ、夕飯の支度できてなくて……」
急いで靴を脱いで家の中に上がる。
「カレーでいいなら作っといた。腹減っちゃってさ」
「ありがとう。私もお腹すいちゃった」
よかった……何も疑われてない……
そう安堵した時だった。
「……あれ、買い物行ったのに手ぶらなの?」
彼にとっては単純な疑問。
でも私の心臓は大きく跳ね、必死で言い訳を探した。