主婦だって恋をする

「買った……わよ」



そう答えるのと同時に、あのドラッグストアでのこと。そこで出会った店員のこと。そして彼の家に行ったこと……

忘れようとしていた全てが、鮮明に脳裏に蘇った。



「ありがと。買うの、恥ずかしかったんじゃない?」


「……解ってるなら頼まないでよ!!」



思わずムキになった私を見て夫は驚いていた。



「……ごめん。そんなに嫌だとは思わなくて」



私はばつが悪くなってうつむいた。

……こんなの、八つ当たりだ。
彼は悪くないのに。



「ううん、私こそ……大きな声出してごめんなさい」



二人の間に少しだけ流れた嫌な雰囲気を断ち切ろうと、私は笑顔を作って顔を上げた。



「カレー、食べよう?」


「ん……そうだな」



そう言って、私は冷めてしまったであろうカレーを温めるべく
キッチンに向かった。


< 25 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop