主婦だって恋をする
「……成美」
今夜は早く眠ってしまいたかったのに、ベッドに入ると夫は私のパジャマの中に手を入れて脇腹を撫で始めた。
「……いいよな?」
それはいつもセックスするときの合図みたいなものだった。
何年も一緒に居ると身体がその手順をすっかり覚えてしまっていて、新鮮味やドキドキは、もうない。
「……うん」
本当は乗り気じゃなかったけど、今日は夫に尽くそうと私は彼の方に向き直った。
「ん…っ……」
自分から唇を押しつけ、舌を絡める。
こうやって愛し合えば昼間のことなんてきっと忘れられる。
……そう、信じて。
「あぁ……っ」
愛撫されている間もできるだけ快感に集中して、他のことを考えないようにした。
そして、夫の背中に爪を立て、甘い溜息を洩らしながら彼を受け入れている最中……
――私は、つい考えてしまったのだ。
『なるみさん――……』
そう私を呼ぶ声が、頭の中でフラッシュバックした。