主婦だって恋をする
扉の前で深呼吸をしてからチャイムを押した私。
風で少し乱れた髪や服装を直しながら、扉が開くのを待つ。
だけど……いくら待っても彼は出てこなかった。
「留守……?」
もう一度だけチャイムを鳴らしてみたけど、やっぱり反応はない。
本当に、居ない……
彼の年齢ははっきり知らないけれど、外見から判断するにきっと学生だ。
平日の昼間に居ないのは当たり前じゃない……
はあ、とため息が出て少しがっかりしている自分に気づいた。
私ったら何ため息なんか……
別に会いたかった訳じゃなくて靴を処分したいだけなんだから……!
私は鞄の中から手帳を取り出して、メモ用のページを一枚破り取った。
靴を取りに来たこと、もうここへは来ないこと、そして自分の名前をボールペンで書いた私。
それを新聞受けに挟まっていた封筒の間にそっと忍ばせると、私は今度こそ家に帰った。