主婦だって恋をする
チャイムを鳴らしたはずなのに応答がないので、彼女は顔を上げて周りをキョロキョロ見回す。
……かわいい。小動物みたい。
そして少し考えてから、もう一度チャイムに指を伸ばした。
ピンポーン……
そろそろ、開けてあげるか。
「いらっしゃい」
そこに立っていた彼女は今までに見たことない程……
化粧が、濃かった。
「…ふっ……」
思わず吹き出した俺に、成美さんが紅く塗られた唇を開く。
「……な…なによ」
「いや……気合い、入ってんなーって」
俺の言葉に耳まで赤くした成美さん。
「ま、上がってよ」
「……お邪魔します」
ゆっくり閉まった扉に、俺は鍵をかけた。
今からこの空間は二人だけのものだ。
誰にも邪魔されたくない。