主婦だって恋をする
「……そうだ。手、貸して」
「……手?どうして?」
首を傾げながらも右手を差し出した成美さんに俺は言った。
「違う、反対の手」
俺は半ば強引に彼女の左手を掴むと、その薬指からするすると銀色のリングを外した。
「帰るときに、渡す。ここに居る間は誰のものでもない……ただの成美さんで居て?」
成美さんは指輪が外された自分の華奢な指を眺め、呟く。
「不思議と自由な気分だわ。拘束されていたわけでもないのに……」
……でしょ?
そう言って彼女の肩を引き寄せた。
成美さんの長い髪からシャンプーのいい香りがする。
「……朝、風呂入ったの?」
「………うん」
「それってしてもいいってこと?」
彼女は俺の腕の中で、何も答えず黙り込んだ。