主婦だって恋をする
「そういえば、これ……」
俺は成美に初めて会った日の彼女の忘れ物を、寝室から持ってきた。
「……忘れてたわ」
「成美のこけ方、すごかったな」
俺がからかうと、成美は頬を膨らませた。
「……あのときは嫌いだったわ、あなたのこと」
「今は?」
「そうやってわざわざ聞くところが嫌い」
俺は吹き出した。
……あの時は嫌われてもいいと
思っていた。
嫌いと意識すれば、自分の意思に反して成美の脳内は俺のことばかりになる。
それを利用して成美の心に入り込んでやろうという俺の作戦に、成美はまんまとはまってくれたわけだ。