主婦だって恋をする
「あ……すっかり忘れてた」
「だからさ、成美が今日家事さぼれるように休んだ」
立ち上がって私の髪を撫でた夫。
「成美……寝癖、ついてる」
彼の手は優しく私の髪を梳いていたのに、私は無意識にその手を振り払っていた。
「……洗面所で、直してくるわね」
笑顔でその場を取り繕ったけど、自分の行動に自分自身で驚いていた。
洗面台の鏡に映る自分を見ながら、私は小さな不安が胸の中でどんどん膨らむのを感じる。
慶を好きになればなるほど……
慶と寝れば寝るほど……
夫に触られることに抵抗を感じてしまう。
「――――成美、目玉焼きとスクランブルエッグどっちがいい?」
扉の向こうからそんな呑気な声が聞こえた。
夫はどうやら朝ご飯を作るつもりらしい。