主婦だって恋をする
二人で映画館に来るのなんて久しぶりだった。
自分達の座席を見つけると、私から手を握って座る。
“痛いほどに切ない純愛”
私の好きな俳優が出演しているのは、そんなキャッチフレーズの恋愛映画だった。
だけど私はそれを選んだことをすぐに後悔した。
公開を控える映画の予告が終わってスクリーンに映し出された本編の最初に目に飛び込んできたもの……
それが濃厚なベッドシーンだったから。
子どもではないのだから冷静に観られる筈なのに……私はドキドキしていた。
握られている手が、じっとりと汗ばむ。
そして物語が進むにつれ、私はこの映画を選んだのは本当に間違いだったと思い知らされる。
『一度だけでいいと思った……なのに、止められないんだ』
『どうして私は奥様より先にあなたに出逢えなかったの……』
スクリーンの中の二人は真剣に愛し合っていたけれど、客観的に観たら“不倫”でしかなかった。
嫌でも彼らに自分と慶を重ね合わせてしまい、気分が落ち込む。