主婦だって恋をする

「ロウソクもらうの忘れたな」


「いいわよ……29本も立てたくないもの」



夕食の後、ケーキを切り分けてお茶を入れた。


さあ、食べよう…と私が上に乗った苺にフォークを刺したと同時に、家のチャイムが鳴った。



「誰かしら……こんな時間に」



待ちに待った一口目を邪魔されて、少し不機嫌になった私。



「いいよ、俺が出る」



夫が立ち上がって玄関に行ってくれたので、私は気を取り直して苺を口に入れた。


……美味しい。


その甘酸っぱさに思わず微笑んでいると、戻ってきた夫に背後から呼ばれた。



「成美、こっち向いて」


「……なあに?」



振り向くと、夫の顔は大きな花束で隠されていた。


< 81 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop