主婦だって恋をする
「ロウソクもらうの忘れたな」
「いいわよ……29本も立てたくないもの」
夕食の後、ケーキを切り分けてお茶を入れた。
さあ、食べよう…と私が上に乗った苺にフォークを刺したと同時に、家のチャイムが鳴った。
「誰かしら……こんな時間に」
待ちに待った一口目を邪魔されて、少し不機嫌になった私。
「いいよ、俺が出る」
夫が立ち上がって玄関に行ってくれたので、私は気を取り直して苺を口に入れた。
……美味しい。
その甘酸っぱさに思わず微笑んでいると、戻ってきた夫に背後から呼ばれた。
「成美、こっち向いて」
「……なあに?」
振り向くと、夫の顔は大きな花束で隠されていた。