主婦だって恋をする
電子レンジの機械音と、食器がカチャカチャいう音で私は目を覚ました。
……帰ってきたのかしら?
ゆっくり体を起こすと、肩にかけられていた毛布が床に落ちた。
「ただいま。先に寝てて良かったのに」
キッチンから温め終わった夕食のお皿を持って、夫が出てきた。
「おかえりなさい……起きてようと思ったんだけどついうとうとしちゃって」
大きなあくびをしながら何気なくテーブルに目をやった私は、自分の犯してしまった失策に気づいた。
メール…開きっぱなし……
私はつとめて自然な仕草で携帯を手に取り、ゆっくりとそれを閉じた。
彼は……これを見ただろうか?
向かいに座って黙々と夕飯を食べる夫の表情を窺う。
「うまい、このしょうが焼き」
けれど夫はいつも通りだったから、きっと見なかったんだ……そう、思うことにした。
と、言うより。そう思わずには、いられなかった。