Must not say.
「君は、人を信じたことがある?」



広い屋上に、彼の声が響く。


彼が何故、こんな話を始めたのかはよくわからないけど、私は正直に答えた。




「信じようと思ったことなんて、一度もない。
人間なんて信じて裏切られての繰り返し。
ただ孤独という暗闇が怖くて、独りという世界から逃げたいだけなんだよ。
信じてるなんて、ただのいい訳・・・。」



彼は何も言わず、黙って私の話を聞く。



「人を信じられない人ほど可哀想な人は居ないとかよく言うけど、そんなのただのキレイ事。自分が裏切られてることも知らずに・・・。人間より憐れな生き物はないって私は思う」




「人間は憐れな生き物・・・かぁ」



ずっと遠くを見つめながら、呟く彼。


何を考えているのか
全く想像できない彼の瞳は

眩しく輝く太陽の光りを反射するように

黒く、・・・澄んでいた。




「人間は孤独。だから誰かを信じて安心したいんじゃないかって思うな。例え相手が自分の事を疑っていたりしても自分にはアイツがいるって、そう信じていられたらすごい心強いし。何より、人間は一人じゃ生きていけないしさ・・・」



何かを思い出すように
ゆっくりと話す彼の姿が


目に焼き付いて離れなかった。
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