Must not say.
彼と初めて会ったのは、

確か入学式の日だったと思う。



その時も私はここで景色を眺めていた。




話しかけてくる様子はなく、
数メートル離れた私を

彼はただ見つめていた。



コミュニケーションをとるのが苦手な私の事を
全て見透かしているかのようだった。




彼なら、


私の心の叫びに
気付いてくれるんじゃないか・・・


そう思った。




それから毎日のように
この場所で会っている。


まあ、会話は少ないけれど・・・。





「桜、きれいだね」

ふと彼が呟く。



立ち上がって見てみると、

雪のように舞うピンク色の花びらが

辺りを埋め尽くしていた。
< 6 / 37 >

この作品をシェア

pagetop