色
****
式のある、荘厳な雰囲気の漂う大きな式場。そこで、国民と重役たちは、異様な雰囲気にヒソヒソと小声で囁き合っていた。
式場内にいるのは王家一族と、重役、上の立場の家臣たち。
式場の外では、この盛大な結婚式を一目見ようと人々が波のように押し寄せていた。
どこを見ても人しかいない。まるで人間の海のようにごった返している。
格好や形だけの外見なら、それは誰もが認める完璧な結婚式だ。
ただ、その場に漂う雰囲気は、荘厳なものだけではなかった。
ひどく重苦しい空気に、ピリピリとした緊張感。なぜか、祝いたいのに心から祝えない。
その原因は、中央にいる二人の主役のせいだと気付くのに、時間はそうかからなかった。
もし、主役の二人がもう少し、ほんの少しでいいから微笑みを見せていれば、さらに素晴らしいものとなっていたに違いない。
「そ、それでは永遠の愛を誓いますですか?」
主役二人があまりに恐い顔をしているせいか、司祭の口調がおかしくなっている。
この二人からは殺気が形を成して見える、司祭はそう思ったという。
「……。……はい」
かなり長い沈黙の後、二人は声を揃えて不機嫌そうに同意する。
返事をもらえないかと思った司祭は、ドキドキしながらも、ほっと息を吐いた。
そして、表情筋を一切動かさない二人を見、引きつり笑いを浮かべながら続ける。
「で、では静 紅様、そして朱 橙妃様の御結婚を祝し」
気弱な司祭の言葉は途中で途切れた。何故なら、大聖堂の扉が開かれ、歓声と共にある人物が入ってきたのだ。
「姉上!!」
入ってきた人物を見ると同時に、紅の表情は一変。先ほどまでが嘘だったかのような満面の笑みを見せた。