色
余談なのだが、橙妃の髪は短いままだ。
誰も何も言わない理由は二つ。皆、突っ込めるような雰囲気ではないと判断したのと、突っ込んだが最後、心身ともに木っ端微塵にされそうだと感じたからだ。
ちなみに、そのことで朱国王がほっと胸を撫で下ろしたのは、言うまでもないだろう。
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紫蓮の挨拶が済むと、司祭は気を取り直して式を続行し始める。
「それでは、この誓いをもって、紅様と橙妃様が夫婦になられましたことを認めます。おめでとうございます」
もう心臓が持たないのではないかと思った司祭は、言葉を簡略し、さっさと自分の役目を終えた。
周囲からのチクチク刺さる視線も気になるが、それどころではない。むしろ文句があるなら代わってほしい。
この目の前にいる男女は、先ほどから目を合わせない所か、殺気を孕んだ空気で相手を寄せ付けまいとしている。
面識があったのは今日が初めてだと聞いたのに、この両者の嫌悪具合は一体どういうことなのだろう。
この数時間足らずの間に何があったというのか。
そんな司祭の心境を余所に、二人の結婚を祝う盛大な拍手が大聖堂を始め、国中を包み込むのだった。