色
橙妃の持つ橙色の玉の力は『爆発』。彼女は比較的小さな爆発をこの部屋の中で起こし、間接的に李黄にダメージを与えようとしたのだ。
しかし、本来、橙妃の玉の持つこの能力は広い空間で行うものだ。なぜならこのようの狭い空間で爆発させると、対象とともに橙妃自身にもダメージを食らうことになってしまうからだ。
飛び散った壁の欠片やガラス片、爆風によって朦々と立ち込める埃に視界を遮られ、橙妃は聴覚をフル活用する。
確かに自身にもダメージはあるものの、静国の動きにくい立派な衣服のおかげで思ったよりとても軽いものだ。先ほどあれだけ邪魔に思った服に感謝しないといけないと橙妃は頭の片隅で思った。
橙妃が腕の痛みをこらえて立ち上がり気配を殺していると、後ろの方から、パチパチと手を叩く音が突如聞こえた。橙妃は攻撃の合図かと思ったが、すぐにそれがただの拍手だと気付き、訳が分からなくなってしまう。
飛び交っていた埃塵が風にさらわれて、視界がよくなると、すでに立ち上がっている李黄がにこにこしながら、扉のあった場所を向いた。
「うん! 合格、合格。ね、リョクユ?」
「そうですねぇ。ちょっと行動に移すのが遅すぎた気もしないですが、とりあえず及第点としましょうか」
李黄が壊れた扉の上に立つリョクユと会話をしているのを呆然と見つめながら、橙妃は状況理解に努めてみる。が、やはり訳がわからない。
「うん、うん。よかったね、橙妃ちゃん」
「なに? なんなの?」
橙妃は目をぱちくりさせながら李黄とリョクユを交互に見つめる。橙妃の問いに答えを返したのはリョクユだ。
「つまりですねぇ。これは審査みたいなものです」
「審査みたいなもの?」
橙妃はリョクユの言葉をそっくりそのまま繰り返す。
「そうです。この数日間で分かっていただけているとは思いますが、紅様は大変短気で凶暴なお方です。彼のお父上……現王でさえ手がつけられません。
なので、この城の中で「生きて」いってもらうために李黄さんにお願いして、あなたを審査していただいたんです。もし李黄さんに負けるようであれば、即刻この国からお帰りいただいてました。紅様は女子供でも容赦ないですからね」