色
それから数十分の間、彼らは話し合いを続けた。なぜそんなに長くなったのか。理由としては紅がワガママなせいと言っても過言ではない。
「だから、なんで、伴侶がいるんだよ。そもそもこからして俺には必要ねえ」
「なに言ってるんですか。お世継ぎがいないことにはこの国終わってしまいますよ」
「あ? んなもん……ていうか、お前、俺に国を任せるつもりねえのかよ」
「ありませんよ、そんなもん」
どうやら紅はリョクユから信頼の「し」の字も置かれていないようだ。こいつぶっとばしてえ! と握り拳を作る紅だったが、それが叶わないことを知っているため、青筋を立てるだけで終わらせた。
さて、そんなことは置いておいて、結局、最終的に嫁候補として上がったのは朱国の姫であった。
この人間の大陸には主要国である五大国以外にもいくつもの小さな国が存在している。大抵は五大国の内のどこかに属すような形となっている。
その中の一つである朱国は静国との繋がりも深く、国同士も比較的近いところにあった。
国力は小さいながらも、自然に恵まれた朱国は空気がおいしいと静国で評判だ。
また、朱国の皇女である橙妃(キヒ)は玉の使い手であるため、結婚するには十分すぎるほどの女性だったのだ。玉の数=各国の戦力の縮図ともなっているため、静国にとってこれ以上好都合なこともなく、朱国にとっても大国との結びつきを深めることができる良い機会にもなる。
問題はといえば、静国の紅も朱国の橙妃もお互い、話したこともなければ相手の顔すら知らないことだ。しかも、話をよくよく聞けば、お見合いも何もなしに、婚姻するとか。
おそらく、リョクユの入れ知恵で「お見合いなんてすれば、紅様がぶっ潰しかねませんからね。ここは一気に持っていくのが得策かと……」なんて至らないことを言ったに違いない。