色
目の前でドアを勢いよく閉められ、締め出されたリョクユと李黄は顔を見合わせた。
次いで、二人してやれやれと肩をすくめた。
リョクユは紅様も短気ですねぇと笑い、李黄はペロッと舌を出して笑う。二人ともこういうことに対する責任という言葉を知らないようだ。全く持って自分たちのせいだとは考えていない。
二人して悪びれる様子もなく、笑いながら紅の部屋を離れると、後ろから何かを思い切り蹴とばしたような音がした。
間違いなく紅の行動だ。それを分かっていた、二人は更に声を上げて笑った。
しばらく一緒に歩いていたリョクユと李黄だったが、リョクユが王の下へ行かなくてはならなかったため、李黄に別を告げる。
「紅様の結婚相手を、報告に行かねばなりませんので、私はここで」
「了解。王様によろしくね」
「伝えておきます。李黄さん、今日は非番ですか?」
「そう! だから暇で暇で……」
「では、後ほどお茶でもご一緒しましょう」
「うん、ありがとう! また、あとでね」
「はい。李黄さんも紅様にお気をつけて」
リョクユがいたずらっぽく笑うと、李黄も逃げるのは任せといてよ! と腕を叩いて返した。
リョクユが報告に行っている間、李黄は特にすることもないので、自分の部屋に戻ることにした。ふらふらしていたらご機嫌ナナメの紅皇子とばったり遭遇しかねない。からかうのも命がけだが、やめられない。
そんな李黄は静国の大切な客人だ。だから、城内に李黄専用の部屋を与えられている。一人用には広すぎるくらいの部屋だが、紅とリョクユという「お友達」もいるので、そこまで寂しくはない。
部屋に入るなり、この静国にきたときからの使用人がさっと李黄の側に立った。要り用があれば言え、ということだ。
特にしてもらいたいこともないので、大丈夫、と一言言うと、使用人は一礼して立ち去った。