バレンタイン・キッス

でもきっと、心のどこかでは違うんじゃないかと思っていたかもしれない。

だって、嬉しかった。

私のこと好きだって、言ってくれた。

そう思ったら、今までフタをした気持ちがじわじわ溢れ出てきた。でも必死にまたフタをしたの。

友達として、大事にしたかった人。
友達でいてほしかった人。

でもきっと本当は、好きだった人。


『私っ…!川村は友達としか思えない!』


それだけ言い残して、川村をそのままにして家の中入った。

送ってくれてありがとうも言わないで。


「…去年の私は、川村を好きな人として見てこなくて。友達だと強く思い込んでたから、あんな形でしか告白を断れなくて。すごくすごく後悔してる…。気付くのが遅すぎた」
「…川村のこと、好きだった?」
「………うん、好きだった」

体育座りの体制から膝に顔を埋めて、丸まった。

自分でも気づかないようにそっと気持ちを押し込んでたのかもしれない。

はじめて好きだと口にしたら、なんだか無償に泣きたくなった。
< 11 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop