バレンタイン・キッス
「ぜっっっったい!!言うべき!!」
「言わない!!」
「後悔してもいいの?!」
「もう今更遅すぎるって!もう傷つけたくないのっ」
  
次こそ失敗したら友達じゃいられなくなる。
壊れちゃうくらいならこのままがいい。
川村が大事なの。

でも本当は、自分が傷つきたくないだけってわかってる。
今更好きだと伝えて、同じように気持ちを返されなかった時が怖い。
私は川村みたく普通に振る舞えない。

結局いつまで経っても逃げてるだけの私。

落ち込む私をみて、千夏はふぅとため息をついた後、ぽつりと話し出した。


「川村ってさ、みんなに優しいけど由香子に対しては何十倍も優しくてかまってちゃんだと思うのね」
「え?」
「だって1on1だって由香子としかしないし、川村から話しかける人って由香子だけだし、なんか用事があるとき必ずっていいほど由香子のところにいくじゃない」


そんなことないと思うけど。
ただ単にいじりがいがあるからじゃない。
なんて、皮肉な思いが溢れそうになる。

もっと自信もちなよとでも言いたげな表情で千夏は笑う。


「もうちょっと自惚れてみてもいいんじゃない?」
「自意識過剰って思われない?」
「そんなこと言ったらそれまでの男だったてことでしょ」

殴っちゃえばいいよなんて笑顔でいう千夏が恐ろしい。
どうか川村がボコボコにしれないことを祈るばかりだ。


「今までの川村の行動を思い出してみて。由香子が思ってる以上にきっと川村は由香子のことみてくれてるよ」
「…そうかな」
「第三者から見てそう思うんだからそうだと思う!
バレンタイン、一緒にチョコ作ろうよ」


頑張ってみてもいいのかな。
いや、頑張らないといけないんだ。

あの時、川村が私を想ってくれてたみたいに、私も言葉で伝えよう。

あの時はごめんねってちゃんと謝ろう。

同じ気持ちじゃなくてもいい。

ただ、私も出会った時からあなたのことが好きだったよって伝えたい。
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