バレンタイン・キッス
観念したように千夏は私の質問に一つ一つ答えてくれた。


「付き合ってない!まじで友達!」
「でも好きでしょ?」
「………。」
「ねぇ。私だってこないだ川村の話したよ」
「…好きですケド。」

あー…ニヤニヤが止まらない。
人の恋愛話はどうしてこうもキュンとするんだろう。

一旦お菓子作りを中断して、出来上がった千夏の生チョコとチーズケーキを食べながら語った。


「何がきっかけだった!!」
「…え〜…。些細なことだよ。
夏の練習中にちょっと熱中症ぽくなって外で涼んでたら浩太が来てくれて、駅まで送ってくれた感じで」
「優しすぎる瀬戸くん」
「そこからなんとなく一緒に帰る流れが出来上がったというか…」


モジモジしながら話す千夏は恋する女の子そのもの。
私なんかとは違ってちゃんと前に進もうとしてる。


「…チーズケーキ、好きだって言ってたから渡そうかなと思って」


だから作ってみた、とぽつりと呟いた視線の先には千夏の勇気が込められたチーズケーキ。


いいと思う。
好きな人を思って作ったケーキほど、美味しいものはない。

受け取ってもらえるといいね。
その恋がどうか成就しますように。

頑張ろう。私も。


「バレンタイン前日も一緒に作って欲しい!
ちゃんと美味しく綺麗なの渡したい」
「うん!一緒にがんばろう!」


決戦は2月14日、バレンタイン。

好きだと伝えるための準備をしよう。
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