バレンタイン・キッス
「佐藤ってさ、甘いもの好き?」
「うん、結構好きかな」


部活終わり、お決まりの1on1対戦の後の校舎裏での2人の時間。

真冬の寒い中、縮こまってホットココアで暖を取る。


「おまえ、いつも甘いの飲んでるから。こーゆの好きかなと思って持ってきたんだけど」
「美味しそう!!」
「だろ?姉ちゃんがこないだ北海道行ったらしくて、お土産でもらったんだわ」


あげる、と渡されたものは北海道で有名なロイズのチョコレート。

ずっと食べてみたかったやつ!

ありがとうと伝えた後、すぐに開封した。

「ん〜っ!おいひぃ!」
「ははっ!!よかったなぁ」
「川村も食べる?」

はい、と渡した指先目掛けて川村の顔が近づいた。

冷たい指に僅かにあたった川村の唇。
温かくて柔らかいそれは私の中の熱を上昇させた。

てっきり手で受け取ってくれると思ってたから驚いた。
ぶわっと顔まで熱くなる。


「んま!!」
「で、でしょ?おねぇさんにお礼言っといてねっ」

何もなかったかのように振る舞うのは難しい。
一つ意識してしまえば全部が気になってしまう。

気にしない、気にしない。
きっと川村にとっては普通のこと。

友達だったらあーんてすること、よくある。


「…かえろ!もう真っ暗!」

でも、私にとってはドキドキすることばかり。
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