バレンタイン・キッス
「俺、お前とバスケするの楽しいよ」
頭をわしゃわしゃされながら、川村にそう言われて、心がキュッと締め付けられる。
私も楽しい。
こんな時間がずっと続けば良いのにと思ってる。
そしたらずっと友達のままでいられるでしょう?
「…次は手加減してね」
「俺に勝ったら、ひとつなんでも言うこと聞いてやるよ」
「言質とったからね!忘れないでね!」
「ぁっ?!ボイスレコーダーいつのまに?!」
真冬の校舎裏にはチャイムが鳴り響いた。
帰る時間。
「…帰っぺ。チャリ乗ってくだろ?」
「…うん、ありがとう」
マフラーを巻き直して、川村の後ろに腰掛けた。
冷たい風を受けながら街灯が照らす道を走り出す。
いつまで、このままでいられるのかな。