真紅の世界
人の姿をしたユリウスに会ってまだ一日も経っていない。
けれど、ユリウスのことを昔から知っているような気がするくらい、私の中でユリウスの存在はとても大きくなっていた。
「この国に慣れるためにも、ずっと俺のそばで、この国について学べばいい」
「……へ?」
「俺の執務室は、もう一つくらい机を置いてもまだ広いくらいだ。俺の仕事を見ながら、この国の文字やこの世界について学べばいい」
「……勉強、するってこと?」
突然の提案に困っていると、シークはいつの間に笑いが止まったのか何事もなかったかのように澄まして立ちあがった。そして、「幸いにも、あちらの世界とこちらの世界は文字が一緒ですからね」と言葉を足してくれる。
「この国を、この世界を、そしてあちらの世界を学んで考えて、どうすべきか自分だけで考えてみろ」
ユリウスの言っていることは分かる。
この世界についてもあっちの世界についても、私は知らないことが多すぎる。何が悪で何が善なのかも分からないから、先入観なしに知る必要がある。
私のいた世界に戻れる方法も分からないし、そんな手段があるのかも分からない以上、私はこの世界で生きていくしかないんだから。
……でも“どうするべきか考える”ってどういうこと?
私が考えて、何かが変わるの?
私の考えで、何かが変わってしまうの?
ぐるぐると大きな不安に押しつぶされそうになる。