真紅の世界
私が自覚していないだけで、もしかして不思議な力を私が持ってたりするのだろうか。
だからアレンやウルも私に“実験”をしたのだろうか。
でも魔法力を調べる魔道具は、うんともすんとも言わなかったはずだ。だから私の中に魔力はないのに。
「サラ」
名前を呼ばれて真紅の瞳を見つめる。でも、自分の瞳が不安で揺れるのが分かった。
「大丈夫だ」
この短い間に、何度ユリウスにその言葉を貰ったか分からない。
でもその言葉を聞くたびに、不安が軽くなって安心してしまうのだ。
本当に“言霊”ってあるのかもしれない。
……もしかしたら魔法のなのかもしれないけれど、でもそれは違う気がする。
「不安に思うことは何もない。 深く考えなくていい、サラに必ず幸せが来るように俺がこの世界を変えてやる」
「……どうして、そこまでしてくれるの?」
これは、当然の問いだったと思う。
それでもユリウスは、どうしてそんなことを聞くんだとばかりに、不思議な顔をしていた。
私には、あの日どうして、シンク……ユリウスがあの部屋にいたのかもわからない。あの後どうして、何度もそばにいてくれたのか、理由がわからない。
助けてくれて嬉しかったし、あの生活から抜け出せて嬉しい。でも、それをしてもユリウスにメリットはないはずだ。
逆に、一人余計に面倒を見なくてはいけない人が増えるという、デメリットしかないのに。
それなのに、ユリウス最初から日私の傍にいてくれた。何度も、名前を呼べって必死に訴えてくれた。そして、私を助け出してこの世界に連れてきてくれた。
私の名前の通りに、幸せが来るようにしてやるとまで言ってくれた。
それはこの上なく嬉しいことだし、勘違いしそうになるくらいの想いを感じるほどだけれど。私にそこまでしてもらうだけの価値があるのだろうか。