真紅の世界
「それが知りたいのか?」
どうしてそんなことを知りたいんだ?と首を傾げるユリウスに、私はただゆっくりと頷いて知りたいと答えた。
「……まぁ、教えてもいいが」
そこで言葉をふいに切ってチラリとシークに視線をやってから、「二人きりの時に話そう」とそこでその話題は終わりになった。
シークは大して気にもせずに、ただにこにこと微笑んでいるだけで何も言わない。
私もそう言われてしまえば、そこでそれ以上追及することもできなくなる。スッキリしないながらも、ただ「うん」と頷くしかなかった。
あのあと、あの広い部屋から出て連れてこられたのは、質素な木で出来た扉の前だった。
取っ手をを捻って扉を開けると、キィという音が微かに鳴る。
その扉をくぐって中に入る。その中には、大きな黒い一つの机が、天井までの高さの大きな窓のすぐそばに、ポツンと置かれていた。
その机の上には、倒れそうなほどの書類が山積みになっている。だから、説明されなくても、この部屋がさっき言っていた、ユリウスの執務室なのだろう。
大きな窓は真ん中で開け放つことが出来るようで、そこを開けたらきっと気持ちい風が入ってくるに違いない。
頭の中では、つい想像してしまう。
この部屋で、開け放たれた窓から入り込む風が、少し憮然とした表情をしながらしっかり仕事をしているユリウスの髪を、さらさらと揺らす風景を。
思わず口元が緩んでしまう。
なんだかファンタジー映画のワンシーンのようだ。
「サラ?」
その声にハッとしてユリウスを見れば、閉じられた窓の前で机に手を付きながらこちらを見ていた。
「あ、なんかレティからここが魔界って言われてたから、こんなに過ごしやすいところでビックリしてたの」
頭の妄想をかき消すように、慌てて言葉を連ねてみる。でも、私の言葉でユリウスの機嫌は、目に見えて悪くなってしまった。
綺麗な眉がしかめられて、明らかな不機嫌さを隠そうともせずにムスッとしている。