真紅の世界
私は、他の人よりも差別や偏見の目にさらされてきた。だから、そんな人たちを“そういう風にしか考えられない可哀想な人”だなんて思っていたことさえあったのに。
わたしも“そんな人たち”と同じ考えをしていただなんて。それを偏見とも思わないで言葉にして、指摘されて初めてそのことに気付くだなんて。
あまりの自分の思慮の無さに言葉が出ない。
「サラはあちらの世界にずっといたんだから、それが常識だと思っていても仕方がない。だが、こちらの世界のことを“魔界”と呼ぶのはやめてくれないか? そのためにも、こちらの世界のことをもっと知ってほしい」
ユリウスの声は確かに聞こえているのに。
言ってることも理解できているのに。私は、自分の放った言葉の残酷さに、頭が真っ白になってしまって返事もできない。
「サラ?」
そんな私をいたわるような声で呼ぶユリウス。
いつでもやさしいユリウスやシンクに助けられてきた。でも、それに知らずのうちに甘え過ぎていたのかもしれない。
こんなにも他人を思いやれなくなっている自分が信じられなくて、許せない。
いつだって蔑まれるのは私だった。
いつだって差別されるのは、私たちだった。
だからこそ私たちは、誰でも色目なく、隔たりなく接することが出来るような人になってほしい、というウメさんの教えをずっと守って、……守ろうとしていたはずだった。
守れていると、思っていた。