真紅の世界
「大丈夫だ、サラ。もう大丈夫」
つないだ手を引き寄せられて、そのままユリウスの胸の中へと閉じ込められる。
トントンと背中をたたいてくれる、ゆったりとしたリズム。
とくとくと聞こえるユリウスの鼓動。
もう、何度も聞いたユリウスの“大丈夫”。
なにもかもが、私を落ち着かせてくれる。
ユリウスが大丈夫だと言うと、本当にそう思える。
どれだけ私は、ユリウスの“言葉”に救われているんだろう。
とても、とても、ユリウスの存在が大切に思える。
私のことを守ろうとしてくれる、ウメさんのような包み込むような優しさ。
チビたちのように、からかってくる無邪気さ。
家族のような、でも少し違うような。
あいまいだけれど、とても大切な存在にいつの間にかなっていたユリウス。
私は、彼を、“失いたくない”。
ユリウスが私のために、――“幸せが来る”ようにしてくれるというのなら。
私はユリウスのために、どんなことでもいいから力になりたい。
ユリウスのためにできることなら何でもしてあげたい。
ユリウスに笑顔でいてほしい。
自然とそう思えた。