真紅の世界


「大丈夫だ、サラ。もう大丈夫」

つないだ手を引き寄せられて、そのままユリウスの胸の中へと閉じ込められる。
トントンと背中をたたいてくれる、ゆったりとしたリズム。
とくとくと聞こえるユリウスの鼓動。

もう、何度も聞いたユリウスの“大丈夫”。

なにもかもが、私を落ち着かせてくれる。
ユリウスが大丈夫だと言うと、本当にそう思える。


どれだけ私は、ユリウスの“言葉”に救われているんだろう。


とても、とても、ユリウスの存在が大切に思える。


私のことを守ろうとしてくれる、ウメさんのような包み込むような優しさ。

チビたちのように、からかってくる無邪気さ。

家族のような、でも少し違うような。
あいまいだけれど、とても大切な存在にいつの間にかなっていたユリウス。






私は、彼を、“失いたくない”。






ユリウスが私のために、――“幸せが来る”ようにしてくれるというのなら。




私はユリウスのために、どんなことでもいいから力になりたい。

ユリウスのためにできることなら何でもしてあげたい。

ユリウスに笑顔でいてほしい。


自然とそう思えた。





< 113 / 122 >

この作品をシェア

pagetop