真紅の世界


数日が経っても、あれから何も起こらなかった。
何の変哲もない、ただただ平穏な日々が続いている。
あの不思議な現象も、一切起こっていない。


それから、毎日ユリウスと食事をするのが、私とユリウスの日課になっていた。
朝食の時は今日の予定を話しながら。昼食はユリウスが仕事でいないときは一人で食べたけれど、それ以外は午前中にあったことを話しながら。夕食は今日一日あったことの報告をして、笑いの絶えない食卓を囲んでいた。


直径1メートルちょっとくらいの円卓で、ユリウスとの距離は近くもなく遠くもない調度いい距離感。向かい合って食べる食事は、とても美味しくて、すごく楽しい時間だった。

私が日中していることと言えば、シークと一緒に騎士団の鍛錬場について行って剣の練習をしたり。この国……“ユリエル国”のことについての勉強と、この国から見たブライス国、カザリル国、ゴベル国、バルト国についての勉強をしている。

でも字が読めないから、勉強はユリウスが選んだ先生に教えて貰ったり、夕食の後時間の空いたユリウスに、私の部屋で教えて貰ったりしている。

教えて貰ったことは、羊皮紙みたいな紙にペンで日本語でまとめている。
驚いたことに、この国のペンのインクは、無くなることがないらしい。
魔法でそうしているらしくて、もし字を間違えたりしたときもペンを持ったまま“この字を消したい”と思えば勝手に消えてくれる。消しゴムいらずの、文字通り魔法のペンだった。

初めてこのペンを使った時は感動して、胸をドキドキさせながらはしゃぐ私をユリウスは楽しそうに見ていた。


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