真紅の世界

“魔”を司るシファには別に会いたくないけれど、“武”を司るタリーには会いたいかもしれない。
頼んだら、剣道しか知らない私の剣術の能力も、少しは使えるくらいましになるんじゃないだろうか。

……とか思ったら現れたりして。

なんて思いながらキョロキョロして部屋を見渡してみるけれど、やっぱりというか案の定というかそう簡単に姿を現してくれたりはしないらしい。

だって今までで3人しか会ったことがないんだもんね。
だとしたら3人全員に同時に会ったことのあるユリウスって、実はすごい人なんじゃないの?

どういう状況で3人の妖精に会ったのか、そしてどんな姿をしていたのかユリウスに聞いてみたい。
そういえば“どうして私にそこまでよくしてくれるのか”っていう質問の答えにも答えて貰ってなかった。

でもそれは今更どうでもいい気がする。
ユリウスにどんな考えがあろうとも、私にとってユリウスは大切で守りたい人だということに変わりはないんだもん。

この質問はいつか、……いつか気が向いた時にでも聞くことにしよう。
それよりも今は3人の妖精についてと、あの“黒”について知らなくちゃいけない。

今日の夕飯もいつも通りユリウスと食べられることになっていたはずだし、その後も特に予定がないと言っていたから夕飯を食べ終わった後にゆっくり話を聞くのもいいかもしれない。



いつも通り一日の報告をしながらの夕食。
セレナ先生に3人の妖精について聞いたことはまだ言っていない。
夕食後にユリウスの部屋に行って聞こうと思っていたからだ。

だから食事がだいたい終わってきて、最後のデザートが運ばれているとき、ユリウスに「お風呂入ってからユリウスの部屋に行ってもいい?」と聞いてみたんだけれど。
デザートのお皿を置いていたメイドさん、部屋の入り口に立っていた護衛の人2人、そしてユリウスの後ろに立っていたシークに目の前のユリウスまでもが動きをピタッと止めて、目をまん丸に見開いて固まっていた。

え、なに。
どうしてそんなに変な顔してみんな止まってるの?


「サラ、それは……」

困った顔でそう言いかけたユリウスは、「いや、なんでもない」と続きを言わずに、目の前に置かれたフルーツタルトのようなものにフォークを刺した。
その後ろにいたシークもなんだか残念なものを見るような目で私に視線をやって、小さく「そういう意味ではないと分かっていても、動揺してしまうのは男の性です」とユリウスの肩を慰めるようにポンポンと叩いた。




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