真紅の世界
夕食後のユリウスとの勉強会は、いつも私の部屋にユリウスが来ていたから気づかなかったけれど。もしかしたらユリウスの部屋には、許された人しか入れないという決まりがあるのかもしれない。
「あの、ユリウスの部屋に入っちゃいけないんだったら、いつもみたいに私の部屋で教えて貰ってもいいんだけど……」
「あぁ、別にそんな決まりはないから俺の部屋で構わない。 ただ急に俺の部屋に来ていいかなんて聞くから驚いただけだよ」
優雅な仕草で綺麗にタルトを完食したユリウスは、私が教えてあげてから当たり前のように言うようになった“ごちそうさま”をして、「じゃあ部屋で待ってる」と言い残して部屋へと戻って行った。
シークもユリウスの影のように後ろをついて行って出て行ってしまったから、この部屋にはメイドさんと入り口の二人しかいない。
「あの、さっきはどうしてみんな驚いたんですか?」
2人がいなくなってタルトを食べ終えてから、こっそりお皿を片づけるメイドさんに聞いてみた。けれど、あいまいに笑ってごまかされて終わってしまった。
結局この時のみんなの不思議な反応は迷宮入りすることになった。
私の部屋は、ユリウスといつも食事をする部屋と隣接している。
廊下に出る扉とは違う、もう一つの扉の先が私の部屋と繋がっているのだ。
もちろん私の部屋からも廊下に出ることは可能だけれど、食事をするときはわざわざ廊下に出るのが面倒でこっちのドアを使っているのだ。
そのドアから部屋に入って、部屋にあるバスルームにすぐに向かう。
お姫様みたいに広いバスルームじゃなくて、アパートとかにあるような小ぢんまりとしたものだけれど。一人で使うには十分すぎるくらいの広さがある。
それに、一つ一つの調度品は素人目にも分かるくらい高級なものだ。
浴槽も夢にまでみた猫足だし、仕組みは分からないけれど湯船に入れば自動的に泡風呂になる。
ユリウスや先生と勉強する時間も剣の稽古をするのも好きだけれど、入浴タイムも私の好きな時間となっていた。
今日もゆっくりとお風呂を堪能して、ワンピースのようなこの国特有のパジャマを着る。タオルドライした髪を適当に手首にはめてあったゴムで頭の上の方で一つにまとめて、早速ユリウスの部屋へと行くことにした。