真紅の世界
魔界の王に逆らったことで、世界から追放されて。
そして、レティに拾われて。
それが私の境遇に重なって、胸が痛くなる。
親に捨てられた私とは違うのかもしれない。けれど、人ごとには思えなかった。
同情と言われればそれまでだろう。
それでも、次にダリアに会ったときは、噛みつかれようがなんだろうがあの首根っこにぎゅうと抱きつきたい。ダリアを、力の限り抱きしめたいと思った。
「サラ、本当にダリアは人見知りなだけなのよ? 本当は優しいんだから、だからきっとサラとも仲良くなれると思うの」
ちょっぴり涙を浮かべたレティは、やっぱり大人びた発言をしていても子供だった。私は、そんなレティの頭をゆっくり撫でて微笑み返す。
「うん、私もダリアと仲良くなりたい」
そう言った時、背後で微かな物音が聞こえた。
振り返ろうとした瞬間、耳慣れた音を耳がとらえた。
――何かを振り落す音。
私がいつも聞いている竹刀の音とは違う、金属が風をきる音。
とっさにレティを背後にかばって、利き手じゃない左腕をかざす。
言葉にできないくらいの痛みが腕を襲う。思わずうずくまりそうになる身体に鞭を打って、右足を振り上げた。
振り上げた右足は、狙い通り相手の柄を持つ手に直撃して、その手から剣が落ちる。