真紅の世界
真紅との出逢い
キュイー、と不思議な鳴き声が聞こえる。
聞いたことのない声。
その声で、サラは目覚めた。
目を開けて真っ先に目に入ったのは、青空じゃなくて天井。
見慣れた少し茶けた天井じゃなくて、真っ白な天井だ。
電気もひもの垂れ下がった電気じゃなくて、シャンデリア。
……やっぱり、夢じゃなかったんだ。
そのことに落胆してしまう。でも、今度は外じゃないだけましだ、なんて、落ち込みそうになるのを食い止める。
元の世界に戻ることを諦めたわけじゃない。
でも、この世界に来てしまったことを嘆いてばかりいても、何も始まらないし変わらない。
そう思いながら真っ先に口にしたのは、「レティ!!」だった。
あの光で、レティが私を守ってくれたのは間違いない。
あのあと、レティはどうなったんだろうか。
あの甲冑を着た奴に、連れ去られたりなどしていないだろうか。
もしそうだったとしたら、ここはそいつの家!?
そう思ったけれど、私の手足は自由に動く。
もしあいつの家だったら、拘束されているに違いないのに。
じゃあここはどこ?
キョロキョロと辺りを見渡してみても、レティの姿も、甲冑を着た人も見当たらなかった。
というよりも、この部屋はとても広すぎる。
一体何畳あるのだろうか。
私の部屋が、余裕で5個は入ってしまいそうな大きさだ。
自分が寝ていたベッドから起きあがる。
そのベッドが、映画などでしか見たことのないような天蓋つきのベッドだったことに驚いた。
ベッドのすぐ横には大きな窓ガラス。
そこを空ければテラスに出られるのだろうけど、今は外に用はない。
壁紙はアンティークのようでとても可愛らしいけれど、茶系統なせいかそれほど甘い感じではなくて私好みだ。
小さめのチェストも、小さなサイドテーブルも細部まで緻密に装飾されていて、素人目にも高級なものだと分かる。
部屋にあるドアで一番大きな扉が廊下につながっているのだろう。
でも、開けた瞬間に何かが出てきたら、という恐怖で開けることができない。
どうしようか、とその扉の前に立ちすくんでしまう。