真紅の世界


もし私が人間だと分かったら、大きくなって丸呑みにされたりしちゃうんじゃ!? と、怖くなった私は、フードを慌てて被った。


「ね、ねぇ?」


恐る恐る黒い物体に話しかけてみると、「キュイ?」と可愛い声で、赤い目をキラキラさせている。


「名前なんていうの?」

「キュ、キュイー、キュキュイ」


きっとこの黒い物体は名前を教えてくれてるんだろうけど、何せ言葉が分からない。

レティの話から考えると、きっとこの子は等級が低いからしゃべれないんだろう。

それでも生きているということは、誰かに使役されていんだと思うんだけど。勝手に名前を付けていいものかもわからない。


「名前はある?」

「キュイー」

その返事が“うん”なのか“いいえ”なのかも分からないし。

「……じゃあ、うんなら瞬き一回、いいえなら瞬き二回して?」


言葉でのやり取りが不可能だと判断した私がそう提案すると、黒い物体は瞬きを一回した。


おぉ、すごい! 初めて意思疎通ができた気がする!


そんな小さなことに感動しながら、さらに質問をしてみた。

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