真紅の世界
「君、目が真っ赤ですっごい綺麗だよねー」
黒い物体を包むように捕まえて、自分の目の前まで持ってきてその赤い瞳をしげしげと見つめる。
真っ赤なんだけど、瞳孔の部分は漆黒で、そのコントラストがとてもきれいだ。
「赤かぁ……、レッド、紅、真紅、紅蓮……、よしッ!」
思いつくままに赤を連想する言葉を口にして、しっくりきたものに決めた。
「君、真紅! シンクね! 私の世界じゃ真っ赤って意味なんだよ、どう? 気に入った?」
笑う私に返ってきたのは瞬き一回。
気に入ってくれたらしい。
一度瞬きした後、ずっと目をつむっているのは笑っているのだろうか。
目をつむっているとただの真っ黒な塊にしか見えない。それが笑っているからだと思うと、とてつもなく可愛く思える。
口もないしどこから声を出しているのか不思議におもったけど、おそらく口があったらこの辺りだろうというところに、軽く口をちゅっとつけた。
「シンクは可愛いねー」
頬ずりをしようとしたのに、真紅は私の手のひらからふよふよと逃げ出してしまう。そして必死に「キュイキュイッ」となにかを訴えているようだ。