真紅の世界
さっきキスをしたから照れているのかと思って、
「シンク、照れてるの?」
と聞いてみたけれど、シンクは間髪入れずに瞬きを二回。
……否定しているけれど、それが逆に照れ隠しをしているように見えてしまう。
言葉はわからないし、身振り手振りもできないシンクの内情が、あまりにも判りやすく顕著に現れていて微笑ましい。
「やっぱり可愛いッ!」
再び手のひらで捕まえようとしたのに、それをひらりとかわしたシンクはふよふよとさっきよりも、気持ち早く進みだした。
照れて、……怒っているのかもしれないけど、それでもレティのところへ案内してくれるらしいシンクの優しさに、顔がにやけてしまうのは仕方なかった。
シンクに、レティは大丈夫かな?と聞いたら一回瞬きをして大丈夫だと教えてくれた。
あの甲冑を着た人は誰なのかな?と尋ねたら二回瞬きをしたから、それは知らないと言いたいんだと思う。
そんなことを訪ねながら歩いていると、シンクがある扉の前で止まった。
そこは黒い豪勢な扉で、やっぱり細部にわたって装飾がされている。
いったいこの扉だけでいくらするんだろう、なんて貧乏人の性が出てしまうけれど、シンクがここで止まったってことはこの中にレティがいるってことだ。