真紅の世界


「シンク、ありがとう」


お礼を伝えると一つ瞬きをして、シンクは一瞬でその場からいなくなった。

いなくなったというよりも、消えたという表現の方が正しいかもしれない。


……えぇ!? 中まで一緒に来てくれないの!? と思ってしまったけれど、私の使い魔でもないシンクがここまで案内してくれただけでもありがたいことだと思って、気を取り直して目の前の扉へと向き直る。


「ノック、とかしないでいきなり突撃したほうがいいのかな。 それともこっそり入ってレティを助け出す?」


ぶつぶつと呟きながら作戦を考えるけれど、普通の女子高生だった私に何が一番最善の策なのか分かるはずもなくて、一番無難にこっそりと侵入することにした。


大きく深呼吸してから、ガチャリとノブを回してそうっと中を伺う。

わずかな隙間から見える範囲に人影はなくてほっとしつつも、今こうやって部屋の中を覗いてる私の姿はとても奇妙に思えるに違いない、と思った。

豪華な扉から部屋を覗くクマもどき。

自分が想像しただけで笑える構図だ。


……そうやって意識を違うところに持っていってないと、今から自分の身に降りかかるかもしれない危険を思って怖気づきそうだった。


さっきよりも扉を開いて、中に身体を滑り込ませる。

部屋の作りはさっき私がいた部屋とあまり変わらない造りをしていた。
ただ大きさがさっきの部屋よりも倍以上あるってだけで。

そして、部屋の中央に置かれたベッドは天蓋つきではななくて普通のベッド。

やっぱり大きさは比べ物にならないくらいで、一体何人寝るんだと突っ込みたくなるほど大きい。でも、その広い部屋に人影はなかった。

でも、私が入ってきた扉とは違う扉が右に側の壁に一つある。もしかしたらその扉の奥に、レティがいるのかもしれない。

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